AEDとは|AEDの使用法について詳しく解説【医師監修】

AEDとは|AEDの使用法について詳しく解説【医師監修】

皆さんはAEDをご存じでしょうか。
現在、AEDは病院だけでなく、学校や駅、商業施設、コンビニエンスストアにも設置してあり、日常生活の中でもいろいろなところで目にするようになりました。「救命処置のために使用されるもの」というイメージをお持ちの方は多いと思いますが、一体どんなときにAEDが必要になるのか、そもそもAEDでどんなことができるのか、AEDの入門編として解説していきます。

AEDとは?

AEDというのは自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)の略であり、除細動(電気ショック)を行うための医療機器です。
“除細動”という文字を見てみると、「細動(細かく震える)を除く」と書きます。致死的な不整脈である心室細動(VF)は、心臓が細かく震えている状態であり、心臓が全身に血液を送り出すことができず、心肺停止の状態です。心室細動に対して電気ショックをかけることで、元の規則的なリズム(洞調律)に戻すことができます。言い方を変えれば、電気ショックが最も有効な治療法ですので、いかに早く電気ショックをかけられるかが非常に重要になってきます。

この先の話は医療従事者でなければ難しいので、医療従事者以外の方はサラッと流してもらえばいいのですが、心肺停止には全部で4種類の波形があり、VFと無脈性心室頻拍(pulseless VT)の2種類の波形が除細動の適応となります。一方、同じ心肺停止でも残り2種類の波形、心静止(Asystole)、無脈性電気活動(PEA)は心臓が止まっている状態です。心臓が細かく震えている不整脈は電気ショックで規則的なリズムに戻りますが、こちらは心臓が完全に止まってしまっていますので除細動の適応はありません(止まっている心臓にショックをかけても再び動き出すことはありません)。このように、同じ心肺停止でも電気ショックが適応となるか適応にならないかによって、対応が分かれてきます。

医療従事者の方や、より詳しく心肺停止の波形に関して知りたい、という方は下記を参考にしてください。

BLSやACLSの救命救急講習|AHA公認コースを受講

皆さんは心肺停止の患者に出会した際に、その対応に自信はもてますか? 院内に勤務していると、定期的に心肺停止が起こります。…

電気ショックの必要性はAEDが判断してくれる

病院の外では医師が近くにいる可能性は少なく、また、モニターで心電図の診断を行うこともできません。また、心電図の波形の話を聞いて「私、心電図なんて読めないし、波形なんて話されても分かりません…」と思った方がいるかもしれませんが、大丈夫です。詳しい使い方は後述しますが、近くにAEDがあり、電源を入れ、正しくパットを貼ることができれば、自動で心電図の解析が始まり、電気ショックの適応かどうかをAEDが診断してくれます。私たちはAEDの音声ガイダンスに従い、安全確認をした後に、ショックボタンを押すことで電気ショック(除細動)をかけることができます。
救助者が複数人いれば、AEDを準備している間も、心肺蘇生法を継続します。迅速な電気ショックをかけることが最優先ですが、その間にも救命率は刻一刻と低下していきます。心肺蘇生法で絶え間なく胸骨圧迫を行うことで、救命率の低下を最小限で留めることができます。

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AEDの使い方

では、AEDの使い方を見ていきましょう。

①まずは電源を入れる

AEDを使う上で大切なことはAEDの電源を入れることです。製品によっては容器を開けると自動で電源が入るものもありますが、AEDの電源を入れ忘れるとAEDは使用できません。逆に、AEDの正しい使用法が分かっていなくても、極論AEDの電源さえ入れてしまえば、電源を入れると音声ガイダンスが流れ始めますので、音声の内容をよく聞いて操作することが可能です。

AED電源を入れる

【引用】BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS

基本的に、指示に従って行動すると覚えていただければいいのですが、もしAED使用の流れを知っていれば音声ガイダンスが流れる前でもパットを貼ったり、コネクタと接続したりと、先回りして進んでも問題ありません。むしろ、電気ショックまでの時間が短縮されます。せっかくこの記事をご覧になった皆様にはガイダンスがなくても使用可能になれるよう、電源を入れた後の流れも解説していきますね。

②傷病者にAEDパッドを貼る

パッドはパッドに印刷されている絵の通りに貼りましょう。右の鎖骨下と左の乳頭の横(中腋窩線上、腋窩より数cm下の部分)に貼りますが、この際に心臓を挟み込むように貼っていることを確認してください。電気はパッド間に流れます。誤った位置にパッドを貼っている場合、電気ショックが心臓からずれてしまうことがあります。体格の小さな小児の場合、パッド同士が重なってしまうようでしたら、心臓を挟み込むように胸と背中にパッドを貼ることもあります。
パッドがAED本体と分離しているタイプでは、AED本体にPADのコネクターを差し込みましょう。最近のAEDの機種では最初からAEDとパッドが一体型になっているタイプも珍しくはありません。

AEDパッドをはる

【引用】BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS

③AEDが自動でショックが必要か判断してくれる

先ほどもご説明した通り、パッドを貼ってコネクタを差し込むと、傷病者に貼ったパッドを使って心電図を読み取り、波形の解析を始めます。
このとき「患者に触れないように」と音声ガイダンスが流れますので、周囲の人々に「離れてください」と声をかけてください。

AED自動解析

【引用】BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS

③ショックが必要と判断されればショックボタンを押す

解析が終わり、AEDによるショックが必要と判断されれば次に充電が始まります。この場合も離れるように音声ガイダンスが流れますので、周囲へ「離れてください」と声をかけてください。

世界基準で見れば、充電中に胸骨圧迫を行うことで胸骨圧迫の中断時間を減らすことができますが、AEDの種類によっては充電中に胸骨圧迫を行うことで誤作動を起こす可能性のあるAEDが混在しています。それがどの機種なのか見分けるのは難しいので、日本では“充電中も患者には触れない”と教えられることが多いと思います。
ショックボタンが光ればいつでも電気ショックをかけることができます。しかし、すぐにボタンを押すのではなく、患者に誰も触れていないか安全確認が必要です。「自分よし」「相手よし」「周りよし」この3つを確認した上でショックボタンを押します。特に、「周り」に関しては、動揺した家族が傷病者の安否を気遣って身体をさすっている場合も考えられますので、必ず足元まで確認するようにしてください。

AEDのショックボタンを押す

【引用】BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS

④電気ショック後は直ちに胸骨圧迫を開始

電気ショックがかかれば、直ちに胸骨圧迫に戻ってください。AEDでは少し間があいてから胸骨圧迫再開の指示が音声ガイダンスとして流れますが、電気ショックの後は患者の脈の確認や意識の確認などは行わず、必ず胸骨圧迫から再開されますので、音声ガイダンスを待たずに胸骨圧迫を再開すると中断時間を最小限にできます。
直ちに胸骨圧迫

【引用】BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS

特殊な状況下でのAEDの使用

AEDを使用する際に、たまに特殊な状況に遭遇することがあります。各々の状況に対して適切に対処できるように、特殊な状況下でのAEDの使用について説明していきます。

①胸部が水にぬれている場合

もし、胸部が水で濡れていれば、電気エネルギーが分散することがあります。パッドを貼る前に水分を拭き取ってください。もちろん、傷病者が水中にいる場合も電気ショックをかけることはできません。

②体毛が濃い場合

体毛が濃い場合はパッドを皮膚に密着させて貼ることができません。手元にかみそりがあれば体毛を除去できますが、予備のパッドがあればそれを貼って、勢いよく剥がし、体毛を除去することができます。

③ペースメーカーなどが埋め込まれている場合

ペースメーカなどが埋め込まれている位置から十分に間隔をあけてAEDパッドを装着する。

④湿布などが貼られている場合

湿布などをはがし、その場所を拭いてパッドを貼る。

まとめ

AEDは①最初に電源を入れる、②音声ガイダンスに従うことで誰でも使用することができます。また、AEDの使用方法を熟知していれば、音声ガイダンスを待たずに、次々と手順を先に進めることでより迅速に電気ショックをかけることもできますし、電気ショック後の胸骨圧迫中断時間も最小限にすることができます。これらは、傷病者の救命率上昇に大きく寄与します。もちろん、「AEDの使い方を知っている」だけでも大切な命を救うことができますが、「AEDを使いこなせる(熟練した手技を身につけている)」レベルになれば、大切な人が突然倒れたときでも救命率を大きく上昇させることができます。
ただし、これらの方法を知識としても、いざという状況の中で実践できるかどうかは別の話となります。是非、お近くの救急講習会などでAEDの使い方や心肺蘇生法について実践的に学んでいってください。

【参考文献&WEB】
BLSヘルスケアプロバイダーマニュアル
BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS
AEDとは|AEDの使用法について詳しく解説【医師監修】
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