救命率と生存率の違い

救命率と生存率の違い

「救命率」と「生存率」は同じ意味ではない

「救命率」と「生存率」という言葉の意味の違いが分かるでしょうか。一緒の意味に聞こえるかもしれませんが、実は少々内容が異なるものなのです。
まずは、総務省消防庁の統計データを見てみましょう。こちらの2つの表は、それぞれ心肺停止となった人の救命率と生存率を表したものです。

心肺停止後救命率推移
【図1】心肺停止後救命率推移
心肺停止生存率推移
【図2】心肺停止生存率推移

【出展】令和元年版 救急救助の現況、総務省消防庁

これらのグラフを見てみると「救命率」9.1%と出ていましたが、「生存率」13.9%となっており、実に4.8%の差があります。この4.8%という数字が何を示しているのか、じっくりと考えてみたいと思います。

「救命率」と「生存率」の違い

「救命率」は社会復帰率です。「生存」しただけでなく、さらに「社会復帰」までできた人の割合を指します。
「生存率」は、文字通り「生存」した人の割合です。社会復帰できた、できなかったは問いません。つまり、一命を取り留めた後にどのような状態になったかまでは加味されず、心臓が再び動き出し、生存した人が一括りになったものが生存率です。
生存率13.9%のうち、救命率は9.1%ですので、生存率13.9%=(社会復帰できた9.1%+社会復帰できていない4.8%)と考えることができます。
冒頭の4.8%は「一命は取り留めたけど社会復帰できなかった人の割合」を指していたのです。13.9%のうち、4.8%、つまり約3人に1人は脳に後遺症が残って寝たきりになったり、意思疎通が図れなくなったりと、以前はできていたことができなくなったと考えられます。

「救命率」を上げるためには

心肺停止の患者が救急車で搬送され、病院に到着すると二次救命処置(ACLS)が施されます。もちろん、CPRや電気ショックは継続されますが、心臓を動かすための薬(アドレナリン)だけでなく、致死的な不整脈を元の脈に戻す薬(アミオダロン、リドカイン)など、薬剤治療の幅は増えます。もし、救急車内でバックマスク換気が上手くいかなかった場合や、気管挿管が難しかった場合でも、多くの医師の手や最先端のデバイスを使用して気道確保や有効な人工呼吸を行うことができます。医療現場で働いていない方々でも、ドラマで救命処置の場面をご覧になったことがあるかもしれません。たくさんの人がチームワーク良く動き、まさに救命の醍醐味ともいえるシーンだと思います。
しかし、実は、二次救命処置で改善できるのは「生存率」だけなのです。二次救命処置で行っているのは、再び心臓を動かすための治療です。
発見直後より有効な心肺蘇生法が行われていたとしても、「救命率」は1分ごとに確実に下がっていきます。病院到着までに時間が経過しており、救命率が限りなく下がっていれば、病院でどんなに優れた二次救命処置を行っても、救命率は低いまま、新たに押し上げることはできません。救命率は、電気ショックで心室細動を止めることでしか、低下に歯止めをかけることはできないからです。
大切な人は、命が助かってほしい(生存率を上げたい)だけでなく、仕事、家事、子どもや孫と遊ぶなど、以前と変わらない生活を送ってほしい(救命率を上げたい)と考えますよね。そのためには、発見した後に一刻も早い電気ショックを施行する必要があります。
こちらに関しては、下記の記事に詳しく記載しておりますので、そちらも参考にしてみて下さい。

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まとめ

救命率とは、生存しただけでなく、さらに「社会復帰」までできた人の割合のこと。
生存率とは、文字通り「生存」した人の割合のこと。

救命率(社会復帰率)を上げるためには、迅速な電気ショックと質の高い心肺蘇生法、この2つを確実に実践することが非常に重要です。

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